初めての南アルプステント泊縦走Part5 雷鳥に会えた強風と霧の中の仙丈ヶ岳登山

はじめに

これは2015年9月下旬~10月上旬に5泊6日で実施した南アルプステント泊縦走の記録である。

この日の天気図はこちら

行動記録

 

風が弱く、妙に落ち着いた夜が明けて、遂に最後の砦である仙丈ヶ岳に登る日がやってきた。これまではテントにシュラフを担いだ登山だったが、この日は殆どの装備はテント場に置いてある。故に、体がとても軽く、空を飛べそうな気分であった。

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出発時の天気は晴れ。レイヤリングはいつもの4枚重ね着で丁度よいくらい。

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最近ULハイクという身軽な装備で登山をするスタイルがあると聞くが、仙丈に登っている最中はそのメリットを強く感じた。シュラフもテントも、その他色々無駄なものを一切持たない山歩きはあまりに軽快で、心地よく、走り出したくなるような気持に人をさせるのだ。

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大滝頭に到着。私は馬の背ではなく、このまままっすぐ小仙丈ヶ岳を目指した。

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山で見る紅葉は、庭園がもとになっている都立公園のような、パッと見て分かりやすい整然とした風貌ではない。が、その自然な秩序に不思議と安心感を覚える瞬間があった。

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六合目に到着。

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Googleフォトが作成してくれたパノラマ画像。ここからは甲斐駒が見える。

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仙丈ヶ岳へ至る道。この辺りから空が曇りはじめ、雨が降りそうな雰囲気に。

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大滝頭を少し登った場所で会ったおじさんに、「雷鳥がいるよ」と教えてもらった雷鳥を発見。岩や木と色がそっくりなので結構分かりにくい。2匹いたが、ツーショットは写せず。この画像も動画から切り取ったもの。

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小仙丈ヶ岳に到着。風が強く、パラパラと小雨が降り始め、慌ててレインウェアを着て、ザックにはザックカバーを。このまま先に進めば更なる強風、暴雨に変わる可能性があったので、「撤退するか、進むか」の判断に悩んだ。ここから山頂まではコースタイムで80分。現在時刻は8:55分。気温も高いし、どうせ雪は降らない。北海道の猛吹雪に比べれば、大したことないだろう。それに、今の自分はザックがとても軽くて空飛べそうなんだ。

「よし、行こう」

私は前進することにした。今シーズンの登山で、一番大きな決断の瞬間であった。

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もう、富士富士やってられない。富士山は厚い雲に消されている。

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この数日の登山でずっと遠くから見ていた仙丈のあの風貌が目の前に。

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2日目に撮影した仙丈ヶ岳の全貌。

雨は幸い下山まで小雨であったが、風は進めば進むほどに強くなった。猛烈な強風に雷鳥とは違う鳥が、飛んでいるのか飛ばされているのか分からないような様子で空を舞うのを何度か目撃した。そして時たま「グルルル」という獣の鳴き声がどこからか聞こえた。深い霧のせいでその正体は定かではなかったが、とりあえず熊鈴を鳴らすことで、かりそめの安堵を得た。

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暴風にうろたえながら、ひたすら歩いていると雷鳥の群れに遭遇。お分かりいただけるだろうか?この中に7匹の雷鳥がいることを。私はこの雷鳥たちと短い時間を共に過ごした。動画を撮影するために手袋を脱いだ私の手は暴風に耐え切れず赤らんでゆくが、雷鳥はこの強風の中平然とてくてく歩く。そのたくましさに勇気づけられ、ますます登頂への意欲が掻き立てられる私。同時に、あの時「小仙丈ヶ岳で引き返さなくて、本当に良かった」と思ったのだった。

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そしてやっと山頂に到着。この看板一つ撮影するのにも、岩陰に隠れて風をよけ、風が弱まった瞬間に飛び出して撮るという結構な苦労をした。

山頂に向かう途中で頭の中をぐるぐるしていた、「俺、仙丈ヶ岳山頂でソイジョイ食べ終えたら結婚するんだ」というセリフを実現すべく、ウエストバッグからソイジョイを取り出したがやはり暴風の冷たさには勝てず、食べきることは出来なかった。その後岩陰に10分ほど身を潜めてあれこれ考えた後、「よし、帰ろう」と思い立ち下山を開始した。だが、ここから景色が見れなかったという悔しさが、6月の雲取日帰りの際の悔しさにすごく似ており、下山と同時に「また来たい」という感情がふつふつとこみ上がった。

冒頭、及び7:12頃に雷鳥の動画あり。

そしてまたしても雷鳥に遭遇。鳴き声は「キュン、キュン」という感じで、雄の「グェエエ」とは明らかに異なる。たぶん、雌の雷鳥だろう。気になったのは足元の赤い何か。帰宅後調べて知ったことだが、これは個体識別用の足輪であり、雷鳥の生態を調べるために取り付けられているとのことだ。

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稜線から降り、ひと安心。大滝頭で食べかけのソイジョイを食べ終え、さらに進む。その後2合目の登山道でオコジョのような小動物が目の前を横切る。どうにかその姿を写真に収めようとしばらく待機していたが、一向に現れずやむなく下山。

長衛小屋に到着後、傘を差しながらレインウェアを脱ぎ、テントに入った。服を着替え、ビールを飲もうか迷いに迷った果てにまた濡れるのが面倒で諦め、下山後の一杯を逃す。ここ、少し後悔している。

その後も雨は降り続け、火を使うことが出来ずやむなく食事はグラノーラとカロリーメイト、その他余った行動食など。撮影した雷鳥の動画をぼんやり見ながら、日没後はすぐに眠った。

しかし、外はどんどん荒れていく。帰宅後、このとき世間は「爆弾低気圧」とやらで大騒ぎになっていたと知った。北岳肩の小屋のブログには、「台風よりもすごかったかもしれない」と書かれていたが、本当にそんな感じ。私のテントはつぶれる寸前まで変形し、雨がパラパラテントに侵入。00:00を過ぎたころからはとても眠っていられず、時折吹きすさぶ超暴風によってテントが大きく傾くのを両手で必死に支え、何とか原型をとどめるのに精一杯であった。もし、これが稜線上でのテント泊だったら。そう思うとぞっとする。写真が全くないのは、色々撮影する余裕がなかったからだ。

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幸い、テント撤収時には雨が止んだ。その後私は倒木により運行が停止になったバスに乗るのを諦め、南アルプス林道を広河原に向かって歩く旅をすることになるが、その頃には綺麗な青空が出ており、念のため履いていたレインウェアの下が蒸し暑くてたまらなかった。

 

つづく(Part6はこちら)

 

 

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